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第3話 プロローグ 『人類は滅亡していました』
すごい!この空から落ちる感覚、スカイダイビングなんてやったことなかったけど、やばいくらい気持ちいい……。
パラシュートさえつけていれば、の話だけど。
「わぁああーーーーーーーーーっ……!!!」
落ちていくそのスピードに恐怖心が出てきた。
(マスター・ジン様、聞こえますか? マスターはワタクシや3つの下僕(げぼく)達の所有者であります。)
「おおお!? 頭の中に直接、アイの声が聞こえる!!」
(はい、量子通信により時間の狂いなく同時に思念通信できます。そのうえで、お紹介していませんでした、もうひとつの下僕の名をお呼びください。『コタンコロ』と。)
(わかった。って、コタンコロってまさか、あのフクロウのコタちゃんか!?)
(そのとおりでございます。あ、あと12.74秒後に地面に激突されてしまいます。取り急ぎお早めに。)
「やっべぇ……コタンコローーーーーーーっ!!!」
オレはとにかくその名を呼んだ。
ん……何も起きない……相変わらず急降下している……ああ、やっぱ、無理か……死んだ……これ。
……と思っていたら、なんだか自分の身体がふわっと浮いたような感覚に包まれた。
「……え……っと……あ、浮いてる……。」
どうやら、オレは空に浮いている……いや、なにかやわらかい白い大きなものに包まれている。
落ち着いて辺りを見回してみたら、オレを包んでいるものがあった……それは人間の大きさの何倍も大きなフクロウだった。
その脚に大事なものをそっと握るくらいのチカラで掴まれ、大空に浮いていたのだ。
「ご主人様!! お呼びでございますか? 我が名はコタンコロ。貴方様に幼き頃、助けていただいたフクロウでございます。
ご主人様にはコタと呼ばれ、たいへん可愛がっていただいておりました。」
「コタちゃんか!! 大きくなったなぁ! ……って、フクロウってこんなに成長するものなのか?」
翼を広げた大きさ、15mくらいはあるぞ……!?
「はい、我はアイ様によって人工的に進化させていただいたのです。ずっと生きてご主人様をお待ちするために……。」
「そっか……5千年、経ってるんだもんな……。」
「お待ちしておりました。ジン様……いえ、ご主人様。我によく話しかけていただいていた、お懐かしいそのお声……。我は嬉しゅうございます。」
そう言って、コタンコロはオレを掴んだまま、上昇し始め、また元のあの扉に向かって近づいていった。
よく見たら……、空の上に、オレの住んでいた3階建ての家・自宅の外観が、そのままの姿で宙に浮いていた。
さっきの扉は玄関のようだったけど、え、家の中ってあんなに広かったっけ……!?
そんなことを考えている間に、家の玄関前に到着し、オレはそのまま玄関の中に入った。
コタンコロは、すると、その姿が小さくなっていき、大きさも姿も人型の姿になって、まあ、鳥の顔のままではあったが、一緒に入ってきた。
同時に扉が閉まった。
さきほどの草原の真ん中のテーブルと椅子に誘導され、アイという女性が声をかけてきた。
「どうぞ、いま一度、お座りくださいませ。マスター。」
オレの隣にアイが立ち、オレの前のテーブルの向こうに4名(?)の者がひざまずく。
「改めてご紹介します。この者らはマスターの忠実なる3つの下僕(げぼく)達でございます。」
「3つって!? えーと、1,2,3,4,5……5人いるよね?」
「わたくしはAI・人工知能でございます。マスターの下僕ではなく、単なる所有物でございます。
そして、イシカ&ホノリは二人で1つ、アラハバキがその1つであり、そのコアであります。」
「そうなると……粘菌のヒルコと、フクロウのコタンコロと、フギュアのアラハバキの3人ってことか?」
「その通りでございます。そして、ワタクシたちはすべて一心同体、マスターの手足でございます。
そして、マスターの身の安全を確保するため、マスターの肉体には、スーパーナノテクマシンが数百兆個、すべてマスターの肉体を守るため存在しております。
これらはワタクシ本体のホスト・コンピューターと同期しており、マスターの思念波を読み取り、迅速に活動します。
また、ナノテクマシンは、さらに数百兆個、この邸宅『霧越楼閣』の周囲に散らばっております。
そして、それらが防衛システムとして稼働しており、『暗色天幕(あんしょくてんと)』という特殊なシールドが張られています。
もちろん、すべてがマスターとリンクし、マスターの意思を瞬時に反映させることができます。」
「えーと、つまり、どういうことができるの?」
……つか、オレの自宅……『霧越楼閣』って言われてんのか……。あぁ……そのネーミングセンス……オレの集めていた小説から来てるっぽいな……。
「マスターがお望みのことはほぼ何でも可能でございます。それ以外のことはこれら3つの下僕達が補います。」
(試しに、前に手をかざして、火を想像して御覧ください。)
おお……! 頭の中でまたアイの声が聞こえる。
オレはそのとおり、手を前にかざすと同時にキャンプファイヤーで見た炎をイメージし、こう叫んでみた。
「火炎放射だーー!!」
オレの超リスペクトしているアニメにそういう必殺技があったから、ついそれをイメージした。
すると辺りの空気の中がなにか、キラキラ光ったかと思うと、本当にアニメに出て来たような、火炎が発生し、目の前のテーブルを燃やした。
ジュワッゴオォォオオオオオオオオオ!!!!
一瞬で前にあったテーブルは燃え尽きた……。おそろしいほどの威力だった。ちょっと、すごすぎてびっくりしてしまった。
その前の下僕達は大丈夫だったかと、見てみると、コタンコロがその手を一瞬にして巨大な翼に変化させ、ヒルコとイシカ&ホノリの双子を守っていた。
「うわっ!!ご、ごめん! まさか、こんなに勢いがあるなんて!!」
「いえ、マスター、おきづかいは無用です。」
と、アイが答えるとすかさず、
「うん、大丈夫だよ~ジン様。イシカは強い、こんなの平気。」
「そうそう。平気、ジン様。ホノリは強い、これくらい大丈夫。」
と、イシカとホノリが声を揃えて言う。
「我もこのくらいは耐性があります。お気になさらぬよう。ご主人様。」
その翼でみんなをガードしたコタも、そう言い添える。つか、コタンコロは何だか威厳があるんだよな。
「ぼ、僕も大丈夫ですよ。ジン様。」
最後に、ちょこんと可愛く、ヒルコが答える。ヒルコはいつのまにかメイド姿に戻っていた。
なんでもアイの説明によると、スーパーナノテクマシンはそのひとつひとつが微細な工場でもあり、コンピューターでもあり、ロボットでもあるとのこと。
さっきの火炎は、大気中の酸素と様々な素粒子から作り出した燃料と一瞬に化合させ、実際に高エネルギーな火炎を生み出したとのこと。
それを、オレの思念波を読み取り、各ナノテクマシンに量子伝導指示を出し、実現してしまうまでの速度も超速い……。
どうやら、オレが眠っていた間に、科学技術はとてつもなく進歩したってことだな。
まだまだ、可能なことはいろいろありそうだけど、それはおいおい教えてもらうとして、一番気になってることをオレはアイに聞いてみた。
「ところで、どうしてオレは人工冬眠させられていたんだ?」
「それは、一度、交通事故によりマスターがお亡くなりになられてしまったからです。」
「ああ、やっぱり、あの時、るーたろうを庇ってオレは死んじゃったのか……。」
「はい。そして、その後、ご両親が……特にお母上の葦亜・彗美(すいみ)教授がたいそうお嘆きになり、人工冬眠理論を完成させ、冷凍睡眠状態から移行させた経緯がございます。」
「ああ、母さんは生物学者・化学のエキスパートだったね。」
「はい、その理論を元に、お父上の葦亜・麗斗(れいと)教授がその技術により、実際に人工冬眠マシンとして完成させました。
そして、その管理システムのプログラムは、ワタクシAI・アワシマが採用されました。」
「え? オレのプログラムを!?」
「マスターが生み出されたワタクシ『淡島プログラム』を改良し、その管理システムとされたのです。」
「そうか……でも、なぜ5千年も眠ることになってしまったんだ?」
「はい。それは、黙示録の神魔最終戦争が起きてしまったからです。」
「え!? 黙示録の? 最終戦争って……? あの? 預言書の??」
「はい、聖書で予言されていた黙示録の審判が実際に引き起こされたのです。」
「それで……どうなったの?」
「はい。その後、人類は滅亡しました……。」
それは、かなり衝撃的な内容だった……。
~続く~
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