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そういえば昔、こんな事件があったっけ。
交番の掲示板に貼られた捜索願いのポスターを見ながら、私はひとりごちる。
ポスターの少女は、生きていれば私と同じ三十歳になっている。どんなに美しい女性に育っただろう──整った目鼻立ち。両目の下に、泣きぼくろが一つずつ。
久しぶりの帰郷だった。
色褪せたポスターの少女が、あるいは精力盛んな夏草の青臭さが、当時抱いたさまざまな想いを喚起する。
それらの想いは、必ずしも心温まるものばかりとはいえない。たとえば同級生への嫉妬の念、あるいは己の容姿への絶望。
そして、あの日X子の家で味わった恐怖。
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