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そんな高揚は、もちろん長続きしない。
X子宅へ到着した時には、気後れと後悔とで、早くも下腹部が痛みだしていた。
せめてもう少し、まともな服で来るべきだった。
従姉のお下がりの裾を引っ張りながら、私はそのお屋敷のドアベルを押しあぐねていた。
魔法のドレスもカボチャの馬車も、私は持っていない。そもそも王子様に見初められたわけでもない。
なのに、シンデレラ気取りで、場違いなところへ顔を出して。
トイレだけ借りて、帰ろうかな──すっかり気がくじけかけたその時、X子が玄関に現れた。そして門前でうじうじしている私を見つけるや否や、にっこりと微笑んで駆け寄ってきた。
「いらっしゃい、待ってたわ。さ、行きましょう。あなたは特別にもてなしてあげる」
ああ、この子はお人形のようだ。
X子に手を引かれながら、私はそんな月並みな感想を抱いていた。
「ごめんなさいね。まっすぐ来ると知ってたら、一緒に下校したのに」
「ううん、委員会の活動があったから」
もっともそれは、ごく短時間の集まりに過ぎなかったのだけど。
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