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以上が、“お茶会の日”の顛末である。
最後の言葉に反して、X子は私への関心を失ったようだった。彼女がそれっきり話しかけてこなくなったので、私は残りの小学校生活で生じた諸問題を、自力で解決しなくてはいけなかった。その代わりに、煩わしい取り巻きの嫌味からも解放されたのだけど。
あの日以来、私は衣料品店やデパートのウィンドウを避けるようになった。
それまで何よりも楽しみにしていた月に一度のショッピング──新しい服や靴、水着なんかを買ってもらえるのだ──に行き渋るようになった娘を、母はとても訝しんでいた。
だけど、どんな恐怖もやがては薄れる。
ショーウィンドウの前を平常心で歩けるようになった頃、私は別のものを怖れるようになっていた。
それは朝に洗面台の鏡を見る時、あるいは夜中にひとりぼっちで目覚めた時に、容赦なく襲ってくる。
この頃、X子の言葉がよみがえってくることが増えた。
──今度はあなたの方が、私を求めることになるのよ。
私は本当は望んでいるのだろうか? 彼女の言うところの、“特別なお友達”になることを? 美しい蝶の如く、標本箱にピンで留められることを?
実家の門を開けながら、私は自問する。
何気なく郵便受けを覗いた時、一通の封筒を発見した。
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