少女の蒐集

1/8
前へ
/8ページ
次へ
 そういえば昔、こんな事件があったっけ。  交番の掲示板に貼られた捜索願いのポスターを見ながら、私はひとりごちる。  ポスターの少女は、生きていれば私と同じ三十歳になっている。どんなに美しい女性に育っただろう──整った目鼻立ち。両目の下に、泣きぼくろが一つずつ。  久しぶりの帰郷だった。  色褪せたポスターの少女が、あるいは精力盛んな夏草の青臭さが、当時抱いたさまざまな想いを喚起する。  それらの想いは、必ずしも心温まるものばかりとはいえない。たとえば同級生への嫉妬の念、あるいは己の容姿への絶望。  そして、あの日X子の家で味わった恐怖。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加