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「……これ。写真アプリ使い始めたきっかけ。宝物だから汚さないでよ」
机の上に置かれた写真は、一見すると同じ人物の花嫁姿を写したものだ。だがそこには決定的な違いがあった。
「え、何これカラー写真?」
そう、1枚は白黒なのに対し、もう1枚には色が付いているのだ。
「いや、でもなんか変だな。恰好が随分古いし背景とか一部色がない」
蓮はまじまじと2枚の写真を見比べながら言った。
「これは彩色写真っていって、まだカラー写真がない明治くらいの頃に、白黒写真に後から色を塗ったものなの。
小4くらいに田舎のおばあちゃんとこ行ったら見つけて、無理言ってもらってきたんだから」
蓮からぱっと写真を取り上げると、自慢げにピラピラと写真を見せつける加菜絵。
「でもなんでこれが写真アプリに繋がんだ?」
不思議そうに首を傾げる湊。するとふっふっふと加菜絵は笑いだした。
「蓮がさっき言ってたみたいに、彩色写真は全部色を塗っているわけじゃない。
それは全部塗ると手間がかかるし、実物を知らないまま色を付けることもあったからってのもあるかもしれない。
だけど私は、そもそも写真全部に色を塗る必要がないからだと思うの」
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