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さっぱりわからんと首を傾げる湊と肩をすくめる蓮を、出来の悪い生徒を見るような目で見る加菜絵はくすりと笑うと言った。
「この写真、一番どこに目がいく?」
二人は顔を見合わせると、せーので指を指した。どちらもピタリと花嫁の口紅を差している。よくできましたとばかりに加菜絵はぱっと顔をほころばせる。
「そうなの、やっぱり赤が目を引きやすいのもあるんだけど、この写真はとくに口紅が可愛く見えるように、場違いなくらい強い赤を使ってるの。でもでも、白無垢を強調するために、あえてほかに薄く色を付けて白を際立たせるのもありありだと思うの」
まくしたてるように話してから、二人がぽかんとした顔で置いてかれているのに気がついた加菜絵は、こほんと咳ばらいをした。
「これは写真アプリも同じだと思うんだ。
目立たせたいところもあれば、目立たせたくないところもある。だからよく見せたいところに目が行くように加工して、目立たせたくないニキビやちょっと太っちゃった頬なんて隠しちゃえばいいの。
だからうまい人が加工すれば、普通のカラー写真よりもエモい写真になるってわけ」
はーとため息をついて、感心したように湊は言った。
「なるほどな、加工した写真はある意味一つの作品なんだな。だから加菜絵は写真アプリが好きなんだな」
しゃべりすぎてきもかったかなと不安だった加菜絵は、湊から思わず嬉しくなるような言葉を言われ耳まで真っ赤にしながら顔を背けた。
湊はその横顔に、かつて写真で見た加菜絵を見た気がして思わずドキッとした。
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