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加菜絵は照れているのを誤魔化すように湊からバスケットボールを奪い取った。そして「あ、返せよ」と湊が言うのを無視してボールを脇に抱えると、腰に手をやり言い放つのだった。
「写真詐欺だなんて騒ぐ男はまじ萎えるから。
たとえ写真の姿は嘘でも、可愛くなればテンション上がるし、そうなりたいってダイエットや化粧も頑張れる。
顔なんて親からもらったただの飾りっしょ。女はなりたい自分に近づくために頑張るから可愛いんだから。
でもすっぴんが可愛いとか言うバカな男は普通の写真じゃその子のよさに気がつかないから、私がアプリ使ってわかりやすくしてあげてんの。
写真アプリは世界を救うんだ。
男だってそうでしょ。バスケうまい男子がモテるのは、一生懸命頑張っているのが、見てるだけでも伝わってくるから格好いいんだ」
加菜絵がパスしたボールがぼすんと音を立てて湊の手元に戻った。
「だから、来週の試合も頑張っていいとこ見せてよね」
加菜絵はそう言うとぷいと顔を背け自分の席へと戻っていった。その後ろ姿をボーっとした顔で見つめる湊を見て、蓮はやれやれと肩をすくめた。
蓮は知っている。加菜絵が湊に送る写真をあーでもない、こーでもないと何十枚もの写真から精査していたのを。
じつは蓮が湊に加菜絵を紹介したのは、加菜絵から頼まれたからなのだ。
もう付き合っちまえばいいのに。
そんなことを思いながら蓮はいまだに加菜絵の後姿に見惚れている湊の背中を強く叩いた。
「試合、加菜絵も観に来るらしいから頑張らなきゃな」
「そんなの関係ねえし」とゆでだこみたいに顔を赤くしながら言いつくろう湊を見て、蓮は「はいはい」と笑うのだった。
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