シュレディンガーの猫は観測されるか

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その女性は、かき集めた落葉を空に投げ舞い落ちる様を楽しむ幼子みたいに、大量の写真を投げては集めを繰り返していた。 (前衛芸術の何等かの表現?) 初見はぎょっとしたが、余りにも異様な光景はむしろ芝居染みていて冷静な分析を促す。 突き抜けて朗らかな表情。 馬鹿笑いしていても、整った顔立ちは美しく日本人離れしている。 ミューズの一人かと思う程に透き通る白い肌と、しなやかな肢体。その体に纒わり着く衣服が白であったならば確かにそうだと勘違いしたかも知れない。 実際は辛子色と言うべき、そう、秋口に黄金色に変わる銀杏の葉をイメージする色合いのツーピース。 余り見かけない変わった色だが、落ち着いた女性らしさを感じる。 どこで買うのだろう。女性の服飾には大した興味がないし、自分の服でさえ既製品を大型ショッピングモールのバーゲンで一気に買うタイプの彼には、果たして彼女が身に着ける服が本当にツーピースなのかも断言できない程に知識が乏しい事この上ない。 (上品な色なのに、美しい人なのに、何故こんな事を?) (あ、カメラ)
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