21人が本棚に入れています
本棚に追加
ただ純粋に幼子の様に楽しむ姿は、一人遊びを衆人監視の元で行う実験動物にすら思えて来る。
(綺麗な人)
悩み一つないと朗らかな表情で笑い、より一層輝く彼女の美貌を勿体無いなと眺めていた。
こんな変人行為をしていたらモテやしない。むしろ引かれて避けられるか、迷惑極まりない別方向の変人に絡まれるかだろうに。
少し気の毒さを感じ始めた頃、かき集めては放り投げられる写真の一枚が足元まで飛んで来たのは、偶然だったのか、必然だったのか。
風に乗ると言うより、空間にある見えない滑り台を滑り落ちて来る様に、その一枚は彼の足元まで舞い降りて来て、コツンと軽い衝撃を靴先に覚えさせた。
裏返しの白い面を見ながら身を屈めて拾い上げる。
クルリとひっくり返した写真には、今しがた眺めていた彼女らしき姿が青味の強い光の中に妖精の様にぼんやりと写っていた。
(返さなくては)
ピントの合っていない写真から顔を上げた瞬間、こちらを向いた彼女と視線が重なり合う。
宇宙の深淵を覗くが如き澄んだ瞳に、意識が、心が、吸い寄せられた。
途端、周りの音が遠退く。
最初のコメントを投稿しよう!