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一日目
どうしたらいいかわからない。ただ歩くよりなかった。
いとも簡単に迷子になってしまった。気づけば辺りは暗くなり、煌々と光る馴染の電灯も視界に一つ二つばかりしか入らない。こんな筈ではなかった。
古ぼけた蛍光灯が音を立てて、
消えた。
私は歩きたかっただけだ。
休日の昼間、家を抜け出し町を探検することが私のたった一つの楽しみだった。今日はいつもの道に少し刺激をと、試しに近くの山に足を運んだだけなのだが、少し暗くなっただけでもうここがどこだがわからない。
今日ばかりは否が応でも自信も無計画さを自覚させられた。
まだ七つを数えるばかりの私には、まだ早い試みだったとは思えなかったが、好奇心が過ぎ去った後の寂しさは痛感していた。
山中は静かだ。
明かりのない山中には当然、誰もいない。
時折、車のヘッドライトが私を照らす。その度に私は声を上げ、助けを期待するが、はなれていくもの、無視するもの・・・。
ここにおいての私の存在は騒がしく鳴く蝉にすら劣っていた。あまりに酷だろう。
月光は冷ややかに私を見つめている。
別に、それで良かった。君が間違いなく正しい。決して慰めてほしいわけではない。
月が一瞬雲に隠れた時、一人、嗚咽を漏らした。
腹が同調するように唸る。本来であれば食事はとっくに済ませている時間。
とはいえ、ここは山中。食料は豊富にある。だが、非凡な知識しか持たない私には、団栗ならなんとかいけそうだという安易な考えが精一杯だった。
私は落ちた団栗を口にする。
不味かった。
それでも、空腹で懊悩するよりは幾許かは、ましだった。
夏場に団栗が落ちないことや、今、黙々と食べているものが昨年落ちたものであること、灰汁があったり、虫が入っていたりといったことは、私には知り得なかった。
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