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その時はまだ、カメラの秘密を知らなかった――――
放課後の教室にシャッター音が響く、一瞬息を止めたように静まった後、止まった時間が動き出したように騒ぎだす。
「え? 壮馬、何これ」
「ちょっ、ウケるんですけど」
「ご、ごめん......」
笑い声と罵声が飛び交う、だがそれは寂しくも三人だけの声だった。
三年生が引退して、写真部に在籍するのは二年の私達だけになっていた。
新しく部長になった私、何でも笑う広島葵、挙動不審で、陰気な壮馬貴之の三人。
そんな私達に巨大な壁が立ちはだかる。
新たに部員を入れなければこの写真部は廃部になると言う、何とかそれを阻止しようと、勧誘の写真を撮っていた。
血色の悪い肌に前髪が目に被さった、言わば毒キノコのような顔の彼が、何を思ったのか前髪を真ん中で分けると、目を見開いている。その姿はホラー映画のワンシーンのようだった。
「ったく、あんたね、なんで変顔するのよ」
「いや......その......」
「ああ、もう、はっきりしないわね!」
私が壮馬の肩を押すと、彼はバランスを崩してよろける。
「アハハ、いや、マジウケる、凪沙、力強すぎ」
「はあ?」
葵はショートカットの後ろ髪を揺らして笑う、その姿が私の怒りをあおる。
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