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・うつす。
蓮は、わたしの『彼氏』だ。
歳は、わたしよりひとつ年上の、16歳。
どちらかと言えば線が細くて、けっして男らしい体格とは言えないけれど。わたしよりも少しだけ背が高くて、包容力はあると思う。
少し茶色がかった髪は癖っ毛で、でもさらさらしていて、とても触り心地がいい。
それがなんとなく犬っぽいので、「かわいいワンちゃんだねえ。わたしが飼ってあげようか?」とからかうと、蓮はいつも「俺は犬じゃねえよ」と、むくれる。
それがまた、なんだかとても、かわいくて。
そんな蓮が、わたしは大好きだった。
「……うわあ、寒いねえ……」
白い息を吐き出しながら、わたしは両手を広げ、空を仰いだ。
今朝見たニュースで、「今日はホワイトクリスマスになるかもしれません」と言っていただけあり、灰色の空は重たげで、いつ降り出してもおかしくないような雰囲気をしている。
……今、何時だろうか。陽が沈んだら、きっともっと寒くなるだろう。
わたしは、ぶるっと身体を震わせてから、隣を歩いている蓮に、もう少しだけ近づいた。
――と。
『……ごめんな、莉子』
蓮の顔を見る。
けれど、蓮はこちらを見ようとはせず、ただつぶやくように、『俺に、莉子をあたためる力があればいいんだけど』とこぼした。
つき合いたての頃の蓮は、わたしが楽しくなるような言葉だけを選んでくれた。――でも、最近の蓮は、よく『こういう事』を言ってくる。
その度にわたしは悲しい気持ちになるのだけれど、わたしがそれを顔に出してしまったら、蓮はきっと、もっと悲しい気持ちになってしまうだろう。
だから、わたしはちょっとだけ笑いながら、「変な事言わないで」と、おどけてみせた。
「蓮が傍にいてくれれば、わたしはいつでもあったかいんだよ。だから、変な心配しないで?」
それだけ言って、わたしは蓮の腕を引っ張った。
蓮は少しだけ動揺したような表情を浮かべたけれど、気にせず、そのまま蓮と腕を組む。
そのまましばらく歩いていると、やがて見慣れた場所に着き、わたしは「はい、到着しましたー!」と大げさに声を出した。
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