・うつす。

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家から歩いてすぐのところにあるその公園は、わたしと蓮が初めて出逢った場所だった。 今からちょうど2年前のクリスマスイブの日、1番の仲良しだった子から「今日は彼氏と過ごすんだよ」と聞いて、最初はうらやましくて、次になんだか悲しくなって、そのあと、急に自分が『ひとりぼっち』な気がしてきて――わたしは意味もなく家から出て、この場所にふらふらやってきたのだ。 「……あの時、公園には誰もいなくて。……おまけにわたし、部屋着のまま家を出てきたから、すっごく、寒くて。 でも、なんだか家にも帰りたくなくて。この木の下で、うずくまって、ひとりで泣いていたんだよね」 言いながら、ゆっくりとその木を見上げる。 この時期なので、さすがに葉は1枚もついていなかったけれど、幹はとても立派で、力強く大地に根づいているのが分かった。 「座ろっか」根元に腰を下ろして、幹にもたれかかる。 蓮もわたしの隣に座って、長い息を吐き出した。 互いの肩が、身体が、触れ合う。……それはまるで、あの日に戻ったかのようで――想いが、感情が、ぐるぐると頭の中を回った。 あの日、ひとりで泣いていたわたしの目の前に突然現れた蓮の姿が、声が、はっきりとよみがえる。 まるで、記憶のバケツをひっくり返してしまったみたいに。 ――ねえ、莉子。俺とつき合って。      俺の、恋人になってください。 見た事だって、話した事だって、ない。 それでも蓮は、ただわたしの事をしっかりと見据えて、わたしの事を、やさしくつつみこんでくれた。 ……ちゃんと考えれば、『突然そんな事が起きるなんて、ありえない』って、分かるはずなのに。 それなのに、わたしは、泣きながらうなずいて、蓮とつき合う事にした。 だって、その日はクリスマスイブだったのだから。 クリスマス、なのだから。 だから、わたしが想像もつかないようなキセキが、まるで魔法みたいな素敵な事が、起きる。 そういうのが起きても、きっと不思議じゃないって、思ったのだ。
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