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帰り道、奥井さんと別れて神社に向かうおれの隣を歩きながら、千歳はふぅと息をついた。
「…天音は、ほんまに無茶が好きやな。」
「…好きじゃない…。」
おれはもう脚を交互に踏み出すことすら面倒なくらい疲れていた。おれを抱きしめて何度も何度も礼を言う奥井さんに笑顔を返すことに、残っていたなけなしのエネルギーはすべて注ぎ込んでしまったのだ。
体よく巻き込んでしまった千歳に感謝なり謝罪の気持ちがないわけではなかったが、今はもう逆さになって叩かれたってこれ以上の反応は出てきそうになかった。
「じゃあ無謀な賭けが好きなんやな。あかんで、将来ギャンブラーとかになったら。」
「…ならない…。」
「辛うじて無視はしていない」程度のおれの反応に呆れたのか、千歳はふと足を止める。俯いたまま歩くおれの視界からは表情が伺えず、さすがに怒らせただろうかと思ってしかたなく立ち止まると、不意に体が宙に浮いた。
「………は…?…え…!?」
間抜けな声が数粒零れる間に、さっきまで立っていた地面がどんどん遠ざかっていく。視界の端で、濃淡の蒼の布地がはためいた。
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