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「もう歩くの限界なんやろ。それより、そのなけなしのエネルギー、おれへの反応に使わんか。」
千歳はスキップをするような軽い動きで電柱やら屋根やらを足場にしながら、信じられない跳躍でおれを担いで跳び上がる。見慣れた道を見慣れない角度で見下ろしながら、おれは力の入らない腕を持ち上げ、腰に回された千歳の腕を小突いた。
「………これ、見られたらやばいんじゃねーの?…未確認飛行物体…。」
「そうやなー。まぁ人間が肉眼で確認できる速さじゃないから大丈夫やろ。一瞬見えても『気のせい』くらいや。」
「…雑だなぁ。」
「今日の天音の説明ほどやないけどな。」
「………それは、ごめん。あと、ありがとう。」
「はー。そういうとこで素直なんずるいな。おれは巻き込まれたから怒ってるんと違うねんで。あれは、『禁忌』ギリギリやろ。あんな危ないことするんやったらちゃんと言っとけ。」
千歳は軽快な跳躍を繰り返しながら呆れたように言う。千歳の言うことは正論だ。おれよりも、ずっとまともだ。
千歳の言う「禁忌」は、霊力を扱う人間が人の生死に関与しようとすることを指している。それは許されない「禁術」であり、多くの場合「禁忌」を犯した瞬間にその力を奪われるとされている。
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