弐:知らぬ仏より馴染みの鬼(とは言うけれど。)

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「天音。これってどういうこと?」 「…………うん?」 休日の朝。柔らかな風に乗ってふわりふわりと境内に舞い降りる鮮やかな落ち葉を竹箒で集めるおれに、不機嫌顔の(いおり)が詰め寄る。 今日はバスケットボール部の練習でもあるのかチームウェアのウィンドブレーカーを着た庵は、くりんとした愛嬌のある瞳を珍しく吊り上げておれの隣を指さした。 「おっ。なんや、この愛想のよくてちっこい版の天音みたいなんは。」 おれの隣で足元の三毛猫と遊んでいた千歳は猫じゃらし代わりに動かしていた足を止め、鋭く指された指から目の前の庵に視線を移した。 「…不愛想で悪かったな。」 「チビで悪かったな!」 おれと庵の声が重なる。たった一言で、2人まとめて効率よくディスるとは大したもんだ。というか、いつものキラキラ笑顔の時ならともかくとして、このなぜか不機嫌全開の庵と比較してもおれの方が不愛想と判断されるなんてちょっとどうかと思う。 「ってそんなことより!おまえいつから天音の近くうろついてるんだよ!」 「んー…いつからやったかなぁ?」 「高校まで来るとか何考えてんの!?」 「あ、そういえばそのウェア、うちのバスケ部のやな。おんなじ学校かぁ。」 きゃんきゃんと噛みつく庵と、その庵を三毛猫と同等くらいの扱いでふわふわ躱して笑いかける千歳の攻防を眺めながら、おれはため息をついた。
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