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「………すごいな。」
思わず目を瞠る。ふわりと鼻をくすぐる、自然の恵み満載という感じの香ばしい香りがこれ以上ないほど食欲を刺激した。
「そうか?まぁしっかり食え。」
千歳はそう言うと、降り注ぐ太陽の光に少し眩しそうに目を細め、ふわぁと大きなあくびをした。
「……これ、材料費とか」
「いらんよ。金なんかかかってない。」
尻に敷かれているぺしゃんこの財布を思い浮かべながら恐る恐る尋ねると、千歳は眠そうな声であっさりと答えた。おれの視線は弁当箱に整然と詰められた、老舗料理店で出てきそうな食材の間を彷徨う。
「この山菜とか」
「採った。」
「…この肉とか、魚とか」
「獲った。」
「……この、米とか」
「盗った。」
「おいちょっと待て!最後の『とった』はどの字だ!」
「あー、それはあれや。天音の家の蔵からちょっともらった。」
「……なんだ、ウチのかよ。びっくりさせんな。」
安堵の息を吐き、箸を口元に運ぶ。やはり、身体の隅々に沁み込んでくるような味だ。一口噛むごとに身体の芯が温まる。しおれていた細胞が息を吹き返し、力が戻ってくる気がする。
おれの食いっぷりに驚いたのか目を丸くする千歳に眺められながら、夢中で弁当を食べ続けた。
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