弐:知らぬ仏より馴染みの鬼(とは言うけれど。)

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温かい。 眩しい。 …柔らかい。 何かに身体を包まれているような感覚だ。目を開けるのがもったいないような気がしたが、瞼の裏に滲む光が強すぎる。ゆっくりと瞼を押し上げると、鋭い光から守るように額の辺りにかざされた大きな手が見えた。 ed3c6dd1-45ed-46e4-8255-ab01af3d5184 「………ん……?」 「………起きたか。おはようさん。」 視界を遮る大きな手がひらひらと動かされる。感覚の戻り切らない頭を動かして声のした方を向くと、銀色の髪を風になびかせながらおれを覗き込む整った顔があった。 「………ぅわ!」 意外なほどの至近距離で変わった色の瞳にとらえられ、慌てて顔を逸らせて体を起こす。起き上がった拍子に、頭の下に敷かれていたらしい千歳の制服のブレザーがふわりとはためいた。 「………え、おれ寝てた?」 「寝てたな。ちなみに今5限目終わったとこ。」 「…やば。っていうかおまえまで一緒にサボって大丈夫なのか…」 言いかけたおれの言葉を遮るように、千歳のいつもよりも低い声が響いた。
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