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輪っかを解いて顔の前で手を振った。男は児童らが真顔でこちらを見ていることに気づいていた。もう退散するべきかと思いながらも身体は動いた。
「ゲームに集中するたーぁめに、痛む奥歯を抜きまして、埋め込むゲーミングインプラーント! 費用は一本八十万!」
両手で八を示して、輪っかを作った。
「あそーれ、カネガネーゼカネガネーゼ!」
輪っかを解いて顔の前で手を振った。ついに児童らがひそひそ話を始めるのを横目にして、もう立ち去ろうとする。
そもそも児童がいることなど想定していなかったのだ。いつもは夜のバイトまでの空き時間に練習しているにすぎない。
お笑い芸人になりたいと思う。とはいえ事務所のオーディションを受けていいクオリティとも思えないし、養成所に入る金はない。無論、肘と膝に磁石を埋め込んだわけでも、電灯の紐相手のトレーナーを雇ったわけでも、ゲーミングインプラントなんていう架空の技術に大枚をはたいたわけでもない。
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