出会い

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 生まれたときからそうだった。染みついた貧乏はそうそう拭いきれるものではない。昼夜のバイトでの稼ぎは弟ふたりの学費に消える。  弟たちはこのネタで笑っていたのに児童らの反応は芳しくなかった。  練りなおしだ、と出入り口を向いた男の目に飛び込んでくる姿があった。  入ってきた男は紫色のテーラードジャケットに同色のパンツでセットアップにし、中にTシャツを着ていた。スケッチブックとイーゼルを抱えている。  広場の隅にイーゼルを立てるとスケッチブックを載せた。何か始まる雰囲気にジャージ男と児童らはそちらに近づく。ジャケット男は会釈をした。ジャージ男たちも会釈を返す。初めて見る顔だった。
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