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「ふたコマ昔話『ももたろう』ということでこちら」
めくった先では、川から流れてきた桃をおばあさんが投擲した包丁で真っ二つにして、切り口から赤ん坊が飛び出していた。
「おじいさんの形見の包丁を肌身離さず持っているおばあさんは川へ洗濯に行くと大きな桃がどんぶらこっこ、ずばっと包丁を投げ切り裂くと珠のような男の子は、そう、ももたろう!」
めくるとおばあさんの投げた包丁が鬼の心臓を貫いていた。
「めでたしめでたし」
ぱたりとスケッチブックを閉じた。
「えー、ありがとうございました」
そそくさと砂まみれのジャケットをはらい、袖を通した。
ネタは終わった。ジャケット男はもう演者ではないし、ジャージ男はもう観客ではない。
目が合った。
休日の午後の公園はいまや遊具も減り、禁止事項ばかりが増えていた。
だが看板にはネタの練習禁止とは書かれていなかったのである。
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