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薄暗がりの大通りには…思い出したように、雪のかけらがちらついていて。
十二月のひんやりとした空気が、すっぽりと街をおおっていた…とある夕暮れのこと。
十四丁目の角にある雑貨の店へと…ひたすらに、少年は駆けていたのです。
しびれるように冷たい、その片手の中に…三枚の銅貨を握り締めながら。
凍りついた舗道にのめりながら、日陰の雪に靴をすくわれながら…幌張りの軍用車の行き交う路地を、右へと折れて、左へと曲がって。
本当に久しぶりのお小遣いを、一度に使い果たすために…少年はなお、駆け続けるのでした。
遊び仲間のみんなが、すでに手に入れている…錫製の、複葉戦闘機の模型に替えること。
それこそが、少年にとりただ一つの、銅貨の使い道でした。
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