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「君の落としものは、これで…まちがいはないね?」
と…?
背後からのその声に、少年は振り向いています。
そこに、立っていたのは。
目深に帽子を被った…男?
そして。
差し出されていた、黒の手袋をはめた手には。
少年の手からこぼれていた三枚の銅貨が、にぶく光っているのでした。
ようやくのこと、少年は思い出していたのでした。
舗道につまずいていた、そのはずみに…ぼくは、このひとにぶつかっていたのだ。
「ごめん、なさい、でも…ぼくは、行かなくちゃ」
三枚の銅貨を、さっと受け取るや…少年はまた、駆け出しかけます。
が。
「待ってくれ、それは…返してもらえないかな?」
などと…男は続けるのです。
そして、少年は気づいていたのでした。
自分の左手が…大判の封筒を掴んだままでいた、そのことに。
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