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「淋しいよ」
一度出た言葉、二度目はハードルが低くなる。またするりと本音が滑り落ちた。
「君に嫌われたくなかった。だからヘタな言動はできなかった」
写真の中の彼女は満面の笑みで俺を見ている。
「俺、バカだった。いや、カッコつけてないでもっとバカやっても良かったのか?」
きっとそうなんだろう、俺が彼女の少し抜けているところが可愛いと思っていたように、彼女も俺の素の部分をみたかったのだろう。
「でも俺、気を抜いたらホントダメな奴だから……。今日も写真海に流そうとしたら掃除の日にあたる運無し男で……」
いや、でも、本当に運無し男なのか?
掃除の日にあたったからこそ、写真はまだ無事なんじゃないのか?
涙が出てきた。フラれた直後はやけ酒しながら感情が盛り上がってよく泣いていたけど、久しぶりに涙が流れる。
「俺、カッコ悪ぅ。でも……やっぱりまだ好きだ」
海岸線の駐車場、運転席に男が一人。エンジンをかけることなく顔をくしゃくしゃにして泣いている。
ああカッコ悪いカッコ悪いカッコ悪い。
こんなにカッコ悪いなら、ついでにもう一つ、恥を加えてもいいだろう。
もう一度、写真の彼女を見る。やっぱり可愛い。でも、写真は動かない。
意を決してスマホの連絡先をタップする。
コールはしばらく鳴っていた。でもありがとう出てくれて。
「ごめん、君とやり直したい」
電話口で花が咲くから、俺の涙も笑いに変わった。
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