せめて、見させて

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電話なんて、人と話す事が嫌いだから使わないものだと思っていた。 通話もメールも嫌い。 言いたい事があるなら、会って話せる人しか私の身の回りにはいないから。 電話かけてまで、話したい人はいない。 そもそも機械という物が、扱いにくくて苦手。 「若いから、機械とか電話機とか得意でしょ?」 なんて、叔父には言われた事がある。 そのたびに、心の中で罵詈雑言を飛ばしていた。 若者が全員、機械が得意だと思わないでいただきたい。 ガラケーからスマホの時代に変わっても、ほとんど触る事はないだろう。 しかしまぁ、スマホという物はそんな私をも変えるのか。 画面いっぱいのゲームアプリ。 読み込み表示が追い付かない程の写真の数々。 使う事はないだろうと、1番スペックの低いスマホを選んだ。 それが間違いだった。 ゲームもキャラクターがかくかく動いては謎バグ技を披露してくるし、スマホはまさに携帯カイロのごとき温かさ。 こんな事なら、もう少しいい物を買えばよかった。 いや、しかしこのスマホも買い換えてから4年は経っている。 寿命もあるのかもしれない。 今度の休みにでも、ショップに行くか……いや、今の時代スマホで買う事も出来るのだっけ? いやいや、私にはまだ難しい……。 私はやはり、通話やらに使う事はないが、趣味のゲームや写真に活用している。あまりの画像の美しさに、はじめは感動したものだ。ゲームは最近だが、写真は昔から好き。 小さい頃はインスタントカメラを持ち歩き、色々なところを撮りまくっていた。 その頃よりも、目で見た物とほとんど変わらない写真を撮れるのだから、スマホは買って正解といえる。 それにしても……。 画面をスクロールしながら、今まで撮ってきた写真を眺める。 これだけよく撮ったものだな。 景色や花、犬や猫……。 美しいものに可愛いものだらけ。 中には、間違えて連写していたのか、コンクリートの地面やブレた空の写真も。 それは流石に削除しないとな。 よくわからない写真を探しては消しを繰り返し、下の方までスクロールしたところで、写真の様子が変わった。 あ、ここからは前のガラケーの写真になっている。 電話帳のデータを一から入れたくはないので、ガラケーに入っていたデータをスマホに移したのだ。 何だっけな。 チップみたいな物だったけど、名前が思い出せない。 ……まぁ、いいや。 ガラケーこそ、よくわからない写真が入っていそうだ。 この際だから、少し整理して……? スクロールしていた時、ある写真が目にとまった。 それは、今までの写真とは違う。 私が撮る事のない被写体。 人が写ったものだった。
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