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絶望
絶望。この言葉がピッタリだな、と思った。
二年前から付き合っている彼には、同時期から付き合っている別の女が居たらしい。何がどうなってるのか分からない。頭が真っ白になる。
「ごめん。どうしても、選べなかった」
「はぁ……」
いくら話を聞いても意味が分からないし、返す言葉もなかった。こんな奴を信じた自分が情けない。実際のところ、最近結婚を意識するようになったばかりだった。そのために貯金をしようとか、式はチャペルがいいね、とか。
「自分の持ち物は持って行く。あとのものは、好きにして」
「うん」
それが、最後に交わした会話だった。小さなダンボール一箱分の荷物と、布製のリュックに詰めた荷物。それが、全てだった。本当にそれだけだった、他にはなにもなかったんだと思うと、ポロポロと涙が出てきた。私ってなんだったんだろう。私、この二年間、何してたんだろう。
ガチャン。
玄関のドアが、鉛のような重たい音を響かせた。その音を背負ったまま、思い出の詰まったアパートを出て行く。
一歩、また一歩と前に出るたびに、両手いっぱいの荷物が重みを増していくように感じられた。目にいっぱい涙を溜めたまま、振り返らずに歩み続けた。
「別れちゃった」
友人のミカにメールをすると、すぐに電話がきた。
「うちにおいで」
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