センチメンタル奮闘記

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最初は俺の一目惚れだった。 寒くなった12月の夜、彼女とは合コンで出会った。 別に恋愛などする気もなかった。 なぜ恋愛する気がなかったのかなんて、気になる人は少ないから割愛、とにかく恋愛なんてする気がなかった。 何故2回も言ったのかって? それは、2回も言うほどに恋愛をする気がなかったってことが伝えたかったから。 そんな俺が、なんと一目惚れをしたんだ。 理由は簡単、顔が良い、ただそれだけ。 まあ言わば、ルックスに惚れたんだ。 ここで1つ言っておきたい、一目惚れってみんなルックスに惚れてるんでしょ? だから一目惚れって言葉は、ルックスが良い人を見て好きになってしまう人が多いから生まれた言葉な訳であって、決して悪いことではないし、顔で女を選んだのかよ!なんて辛辣な言葉は受け付けておりません。こんな男でも、わりとセンチメンタルなもので。 まあ少し脱線したんだけど、恋愛する気のない男が一目惚れをしたってこと抑えてくれればそれでいい。 また、自分で言うのも何だが、俺はフツウの人に比べて、恋愛経験が豊富だ。 別に特別顔が良いわけでもないが、それでも人並み以上に恋愛はしてきた。 とか言っておきながら、ここでセンチメンタル発動。彼女に惚れたものの、身体目当てと思われたらどうしよう!?なんて考えすぎて、行動できない。 いや、どうした俺!さっき自分で「恋愛経験が豊富」アピールしておきながらこのザマかよ!!!! こんな事、お手の物だったはずなのに。 彼女が可愛すぎたんだ。自然すぎるボディタッチ。初対面の男の前でも健気に笑う横顔。 全てにおいて、俺のストライクゾーンど真ん中。小悪魔か!?とさえ思うほどに可愛くて、男を落とす方法を知ってやがる… 何としてでも連絡先が聞きたい!!!! その一心で俺は奮闘した。 その思いも虚しく、その合コンは終幕を告げた。 はぁ。ため息をつきながら店を出る。 そんな時に、俺は店に財布を忘れた事に気付く。 「連絡先も聞けないくせに、金まで忘れるのかよ。笑」 自分に対する情けなさと呆れから、持っていた荷物を戦友(一緒に合コンに参加した男友達、一応ライバルだから笑)に預け、1人店に忘れ物を取りに帰る。 財布は無事見つかったものの、財布の中に入った、たった4000円しかないお金よりも彼女の連絡先聞ける勇気が欲しかった。 再度肩にズシリと嫌な気持ちが乗っかったのが自分でもわかる。 そんなことを思いながら合コンメンバーの元へ戻るも、皆が見当たらない。 「おいおい、俺が彼女の連絡先を聞けないからか?皆が俺を置いてどっかに行っちゃったよ。」 今思い返せば、ものすごい意味不明な理論である。 でも言い訳させてくれ。当時の俺は、彼女の連絡先を聞けないことがそれくらいにショックで痛手だったんだ。そりゃこんな思考回路にもなるさ。もうどうにでもなれ、そんな気持ちだったんだから。 そんな俺を見兼ねたのかな、神様が千載一遇のチャンスをくれた。 なんと、彼女が1人、俺のことを探しにきてくれたんだ。 「あ、いたいた!ごめんね先に行っちゃって!実は皆でカラオケに行こうってなったんだ!だけど皆酔っ払った勢いで先に行っちゃって。だから探しにきたの!あ、探しにきたのが私でごめんね(笑)」 いやいや、女神。もはや女神。 何なんですか? 探しにきたのが私でごめんね? いやいやあなたでどうもありがとう!!!! 他の人も酔っ払って先にカラオケ行ってくれて、ありがとう!!!!!!! こんな千載一遇のチャンス、二度とない。 やるんだ俺。 今だ、連絡先を聞くなら今しかねぇ!!!! 「あのさ!!!!!」 勇気を出した。 今まで俺がしてきた恋愛なんて、ただのお遊びだったとさえ思えるほどのマジ恋。 始まってもない恋愛に心躍らせ、声を震わせ、彼女に聞いた。 「連絡先を教えて!!今度二人でご飯にでも行こう、今日楽しかったし笑」 アホか俺!もっと素直に聞けよ!あなたのコトが好きだからって言えよ!!!! いやもう連絡先聞きたいって伝えられたしいいや!頼む!いい返事を聞かせてくれ!!! 「誘い方ベタかよ(笑)いいよ、私も楽しかった!また行こう!」 はいキタコレ。もう俺の心の臓が口から飛び出るくらいに叫びたかった。嬉しすぎた。 いやもはやそんなことどうだっていい! 早く連絡先を!!! 嬉しさと緊張からグッショリと濡れた手をポッケに突っ込み、急いで携帯を取り出そうとする。 「…」 「ん?どうしたの?(笑)」 「あああぁぁああぁぁああああああぁあああぁああああああぁあああぁぁあああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 この時俺は初めて人生で声にならない声で叫んだね。 そう言えばさっき、財布を取りに帰ったときに、戦友に荷物預けたんだっけ。携帯も一緒に預けたんだっけ(怒) 笑えるよ、4000円は返ってきても連絡先聞けないんだからさ。 そんな奇声を発してしまった俺の姿を見て彼女は唖然。 カラオケに行った後も連絡先は聞けず、そのまま解散。 そんな人生最大の後悔をした俺の話。 こんな千載一遇のチャンス掴めない男だっているんだからさ、まあ皆も小さな事でクヨクヨしないでくれ。何かきっと、いつかいいことあるからさ。 ま、そんな俺の事を面白がって彼女から友達伝いに連絡先を聞いてきてくれたのは、また数日後の話なんだけどさ笑 ー完ー
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