直記の真実

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直記の真実

カシャ 「あっ……」 僕は、小さく呟いて、カメラの設定をいじった。 またやってしまった……。過去で撮影をするときは、誰にも見つからず、カメラの音も出さない。そんな基本的なことがすぐ抜けてしまう。 しかし、まさかひーじいちゃんに見つかってしまうとは……。あの時は、手がすべって、カメラを落としそうになった時にシャッターを切ってしまったんだ。シャッター音を切り忘れたまま……。 ただ、今はレンズの先が騒がしく、さっきみたいに誰かに聞かれてはいないようだ。 今は、ひーじいちゃんの子ども、つまり僕のおじいちゃんが生まれたところだ。 みんな笑顔の姿をしっかりカメラに収めて、その時間を後にする。 ……ひーじいちゃんごめんね、焦ってたとはいえ、死んだことにしちゃって。 死んだ人の人生アルバムを作るのは本当。そのための写真集めを僕が志願して、時間旅行中なのも本当。だけど、死んだのは、本当は“ひーばあちゃん”なんだ。 ひーじいちゃんは、95歳だけどまだまだ元気。120歳くらいまで生きる人が増えてきた僕の時代では、別に普通のこと。だけど、ひーばあちゃんは病気になっちゃって、いろいろ頑張ったけど、あんまりつらい治療を続けるのも嫌だからって、緩和治療に切り替えて、最期は穏やかに亡くなっていった。 ひーばあちゃんの名前は『瀬口杏那』。旧姓は『寺原』って聞いた。 まったく、ひーじいちゃんがひーばあちゃんの名前聞いたときはさすがに焦った。言えるわけないじゃん。そもそも、未来のことを教えるのは禁止だし。今、家の中にいる女の子が結婚相手だよなんて、絶対言えないよ。 ひーじいちゃん、ねずみがどうのこうのって明らかにひーばあちゃんのこと意識してんじゃん。 ……まあ、僕が辿ってきた感じ、ひーばあちゃんの方がひーじいちゃんのこと好きだったみたいだけど。ひーじいちゃんが田舎に来てるとき、ひーばあちゃん、他の友達の誘い断ってでも必ず遊びに行ってたもんな……。 ピピピピッ、ピピピピッ お、次の時間についたみたいだ。カメラの設定ちゃんと確認して……よし。 ひーばあちゃんの人生アルバム、絶対良いものにするぞ!
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