1人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前、どこの子だ」
「ごめんなさい……」
「こんなところで何してんだ」
「……」
「おい、黙ってたらわかんないだろ」
「……」
少年は頑なに俺と目を合わそうとしない。
「何も言わないなら……また叫ぶぞ」
そう言って俺は、口をふさがれないように押し入れから顔を背け、杏那たちがいる台所の方に向かって叫び出す素振りを見せた。
「あーっ、ごめんなさい!話します!話しますから!」
少年が慌てて俺を制止する。
「えっと……その……」
話すと言ったわりにはなかなか煮え切らない態度の少年に少しいらだってきた。
遺影もまだ見つけられていないのに……
その時、少年が何かを抱え込んでいることに気がついた。
「それ、なんだ?」
「えっ?あっ、ダメ!これはダメ!」
俺が手を突っ込んでそれを取り上げようとすると、少年は必死に抵抗してくる。だが、10歳程度の子どもの力なんて大したことない。
俺はそれを引っ張りだした。
それは、小さな四角い箱だった。手のひらに収まるほどの大きさで、黒無地に幾何学模様がほどこされている。材質はプラスチックで、大きさの割に重みがある。
「なんだこれ……」
「返して!」
少年が手を伸ばしてくるが、俺はサッと避ける。
よーく観察すると、小さなレンズがついていることに気がついた。
最初のコメントを投稿しよう!