押し入れから少年

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「これ、カメラか?」 少年に問いかけると否定も肯定もせずにまた俺から視線を反らす。 また叫び出す体勢を取ると、再び慌てて、 「そう、です……」 と肯定した。学習しないやつだ……。 なるほど、さっきのカシャッという小さな音はこのカメラの音か。 ……ん? 「盗撮か!?」 「ち、違います!人聞きの悪いこと言わないでください!……隠し撮りです!」 「同じだ!」 「ですよね……」 「わかってて言ったのかよ……」 こんなやり取りでなんだか脱力してしまい、再び少年に向き合った。 「で、お前は誰なんだ。名前は?」 「……直記(なおき)」 「直記な。苗字は?」 「……」 「おい」 「……瀬口」 「……ん?瀬口?ん?」 「瀬口、直記です……」 「……じいちゃんの親戚?」 「広い意味で言えば……」 「広い意味?」 「えっと……その……」 「あーもう、じれったいな。盗撮カメラ壊しちゃうぞ!」 「ダメだって!ひーじいちゃん!」 「……ひーじいちゃん?」 「あっ」 今度は直記が自分で自分の口をふさいだ。いや、それ失言したのが丸わかりだぞ。 「誰が、ひーじいちゃんだって?」 「んーっ!」 直記は口をふさいだまま、なんでもないとでも言いたげに首を横に振る。 俺はカメラを持った手を高く振り上げる。まあ、本当に壊す気はないのだが。この謎の侵入者の正体をなんとしてでも知りたくなっていた。
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