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タイムマシーンなんて、そんな簡単に信じられるわけない。でも、もし、万が一本当なら、利用しない手はない。
「ひ孫の直記君に一つお願いがあるんだけど」
「えっ……な、なに?」
「俺のじいちゃん……直記から見るとなんて言うんだ?まあ、そんなことはどうでもいいけど、俺のじいちゃんの写真撮ってきてくれないかな?」
「えっ!?」
「いやー、じいちゃんの遺影になりそうな写真が全然なくてさー。覗き見してたなら、なんとなく状況わかると思うけど。だから、まだじいちゃんが元気なちょっと過去にいって、じいちゃんが笑ってる写真撮ってきてくれないかなーって」
「そんなの無理ですよ!大体、過去の人に僕の正体がバレたこの状況だけでもヤバいのに、過去の人に協力したなんて知れたら、僕どうなるか……」
「いいじゃん、いいじゃん、さっと行って、さっと戻ってくればバレないって」
「無理ですよ!」
「ていうかさ、すでに撮った中で、じいちゃんも写ってる写真ないの?それ一枚提供でもいいよ」
と言って、俺はカメラを直記に返す。
「えっと……」
直記は素直にカメラをいじりだしたが、すぐに我に返った。
「いや、それもダメですって!大体、遺影ってこの時代、紙に印刷しないといけないですよね!?ここじゃ無理ですって!」
「なんか、データをメール送信とかできないの?それか、壁に映してくれれば、俺が自分の携帯でそれを撮るよ」
「あ、なるほど……いや、ダメですって!」
「ひいじいちゃんの頼みが聞けないのか?またカメラ取り上げるぞ?」
「もう、半分脅しじゃないですか!?」
「だって、本当に困ってんだもん。な、頼むよ」
と、俺はすごく困ったような表情を作って、直記に頼み込んだ。実際困ってるわけなんだけど。
「うー……一枚、だけですよ」
直記は、このままだといつまでも帰らせてもらえないことを悟ったのかしぶしぶ了承した。
「よっしゃ!」
「ただ、ひーじいちゃんのおじいちゃんだけが写ってる写真が残っちゃうと不自然なので、ひーじいちゃんがおじいちゃんに確実に会った日を教えてください。その日に行って撮ってきますんで……」
「えっと、いつだっけな……ちょっと杏那か母さんに聞いてくるわ。待ってろよ」
俺は、その場を離れるのをちょっと不安に思ったが、台所へ向かった。まあ、これで逃げられても、ダメ元だったわけだからしょうがない。あんまり俺の子孫を困らせるのもあれだしな。
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