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部屋に戻ると、押し入れの上段で直記は大人しく座っていた。
「お、逃げなかったんだな。良い子だ」
「あっ、そっか……」
……そもそも俺がいない隙に逃げるという選択肢が思いつかなかったのか。シャッター音を俺に聞かれたり、あっけなく見つかったり、ちょっと抜けてるなこいつ……。大丈夫か、俺のひ孫……。
俺は、直記に最後にじいちゃんのところに遊びに来た期間を伝えた。中3の夏休みに受験勉強に集中するという名目で1週間来たのが最後だった。杏那もその期間はよく一緒に勉強しようと来てくれた。
『おじいちゃん、直記に会いたいなぁってよく言ってたよ』
杏那にそう言われて、忙しさを言い訳に来なくなったことを少し後悔した。
「じゃあ、行ってくるんで、押し入れ閉めてください。さすがに、タイムマシーン使うところ見られるのはまずいので……」
「はいはい」
タイムマシーンがどんなものか気になったが、さすがに直記の言うことを聞いてふすまを閉める。ふすまの隙間から一瞬光が漏れた。
数秒後、もう一度光が漏れ、トントンッと中からふすまを叩く音がした。
開けてみると、さっきと変わらない様子の直記がいた。
「ただいま」
「早っ!」
「いや、同じ時間に戻ってきただけなんで……」
「なるほど」
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