1人が本棚に入れています
本棚に追加
データの転送は、やっぱり未来の機器と今使われてる電波は相性が悪いのか上手くいかなかったので、壁に写真を映してもらい、俺の携帯でそれを写真に撮った。
茶の間で俺と杏那が勉強しているところに、じいちゃんが麦茶を運んできてくれたところの写真だった。じいちゃんがいい笑顔だ。
「また押し入れから撮ったのか」
「古い家は押し入れを活用するといいぞって、教えてもらったから……」
「……ありがとな。助かったよ。ごめんな、無茶言って」
「ひーじいちゃんの写真でもあるから、いろいろはなんとかごまかします」
「大丈夫か?」
「無茶やらせた本人がいまさらそんな心配しないでください!!」
「ごめんごめん」
「じゃあ、あんまり長くいるとまた怪しまれるだけなので、行きますね」
「あ、一つ聞きたいことがあるんだけど」
「今度はなんですか」
「俺の結婚相手だれ?お前のひいばあちゃん」
「!」
そう、何気にずっと気になってたんだよね。ひ孫がいるってことは、無事に結婚できたってことだ。俺は誰と結婚するんだろう?もしかして……
「そ、そんなこと教えられるわけないじゃないですか!じゃあね、ひーじいちゃん!」
そう言って、閉めにくいだろうに直記は中から無理やりふすまを閉めて、漏れ出る光と共に帰っていった。
次にふすまを開けたときには、当然誰もいなかった。
あまりに非現実な出来事で、白昼夢でも見ていたかななんて思ったりもしたが、俺の携帯にはしっかりと、じいちゃんの笑顔の写真が残っていた。
「悠真、なんかいいのあった?」
台所の方がひと段落ついたのか、杏那が顔を出した。
「ああ、うん。ちょっと、写真屋行って、じいちゃんの顔だけ切り抜いてもらってくるよ」
「よかった、あったんだ。私も買い出し頼まれてるから、一緒に出よう」
杏那の後について部屋を後にする。ふっと押し入れの方を振り返ってみる。開け放たれたふすまの奥にはもちろん何もない。
直記に会えるのは、何十年後になるだろう。
「悠真、早くー、置いてっちゃうよー!」
「ごめん、今行くー!」
またな、直記。
最初のコメントを投稿しよう!