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半年前、俺らは最も大切な宝物を喪った。
小児癌で四歳になる娘のアキを看取ったのだ。
苦しい癌の治療を幼い子供に受けさせるのは
本人が辛いのは当然だが、周りの俺らもこの上ない苦しみだった。
副作用で皮膚が脆くなってしまっているので
痛がって泣くアキを、俺らは抱きしめることもできなかった。
妻はそれでも気丈にアキと共に頑張った。
だが癌の進行は早く、ふっくらだったまあるい頬は
肉が削げ落ち、目だけがぎょろぎょろと大きくなった。
それもやがて薬の副作用でぱんぱんに腫れあがり、
点滴の管から体液がしたたり落ちるほどだった。
どんな姿でも一日でも長く俺らのそばにいて欲しい・・。
俺たちを日々支えていたのは、その一心だけだったと思う。
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