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倒れそうになった妻を支えていた俺と妻は同時に息をのんだ。 その時キッチンの入り口近くにいたアキの声が聞こえた。 「おとーたん。おかーたん。」 振り向くとアキが紙を火にくべるように、 ちりちりと足の方から丸まりながら消えてゆく。 妻が悲痛な悲鳴を上げた。 「アキ!アキーーッ!! あの子が・・あの子が・・消えてしまうっ!」 俺はたまらずにアキの体にしがみついて、 見えない火の粉を手で押さえて止めようとした。 「だ・・だめだっ・・アキッ!・・行くなっ!」 見えない火が、俺の手から腕‥顔や腹に じりじりと焼き焦がしてゆくのが解る。 熱さに身が焼かれる。 それでも手を離せない。 滂沱(ぼうだ)と涙が(こぼ)れる。 これはきっと俺たちが幼いアキに無理強いをした、 生きさせようとした痛みなんだ。 どれほど痛かっただろう・・どれほど辛かっただろう・・。 俺たちの都合だけで、俺たちが逝って欲しくなくて、 苦しみを強いてしまった・・。 ごめん・・ごめんよ・・アキ。 でも・・それでも・・生きていてほしかったんだよ。 別れられないくらい、愛していたんだよ・・。 俺は熱さに叫びながら、体中で消えるアキを抱きしめた。
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