安藤星也①

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このホコリにまみれたアルバムには覚えがある。 俺と父さんと母さんの写真がたくさん貼ってある。 最近は恥ずかしくて家族で写真なんて撮らないけど、昔はよく撮っていたらしい。 産湯に入っている俺、遊園地で泣く俺、小学校の演劇で木の役を張り切る俺・・・ たくさんの写真が貼ってある。なかには、若い頃の父さんや母さんが写っているのもある。 連絡船が怖くて泣く俺を抱きしめて笑っているのは若い頃の父さんだ。 お菓子をひっくり返す俺に驚いているのは、若い頃の母さんだ。 ばあちゃんと写った写真も何枚かはあるけど、そんなに多くはない。 懐かしいな、と思っていたら、1階に居るばあちゃんが俺を呼んだ。 「星也。知り合いからお菓子貰ったから降りといで」 1階に降りると、父さんと母さんもばあちゃんも出かける支度をしていた。 貰った和菓子を食べながら母さんにどこに行くのか聞くと、「今からひいおばあちゃんとこ行くの。あんたもいく?」と。 「んー・・・行く。まって支度してくる」 ひいばあちゃんにはしばらく会っていないし、もしかしたら今回が最後かもしれないし。 せっかくだから、ひいばあちゃんに会いに行こう。 ・・・そうだ。あれを持っていこう。きっと必要になるよな。
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