異論は認めない旨

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 このように、これまでは発達障碍への理解がないがために、彼らに無理難題を強いてたくさんの悲劇を生んできた。  障碍者の人権問題はまだ途上、そして権利を獲得するには長い時間をかけて周囲へ地道な啓発活動を行っていくしかない。  そこで発達障碍問題をタブー視する人たちに警告を発したい。実は彼らこそが悪意なく社会福祉を阻害している存在であるかもしれないのだ。物は言いようで、私に言わせればしたり顔で綺麗事を言う人間は臭い物に(ふた)をしているだけであろう。  これまで学校で習ってきたような道徳観において、障碍者に関してどうこう触れるべきではないとしたい気持ちはわかる。私もただ漠然と差別や偏見をなくせ、人には誰でも平等に接しろと口酸っぱく教わってきた。けれどもそれは戦争で大変なウクライナに千羽鶴を送りつけるようなものだ。本人は障碍者に寄り添ったつもりになっているかもしれないが、発達障碍者は健常者と同様に扱われるから実生活で困っているのに、自己満足の平等観を押し付けられても当事者には迷惑なだけである。古い道徳観が現代でいつまでも通用するはずがない。  平等論は理想論でしかないことにもそろそろ気づいてほしいところだ。共産主義の平等理念はたしかに素晴らしいものであるが、人間には欲がある以上それは絶対に実現しない。発達障碍者も他の人と平等に扱えたならそれはなんと理想的なことであろうか。 
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