目玉が見てる

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 11時にインターホンが鳴った。寧々は彼氏が来たんだと察知して玄関に行く。ドアを開けると辛子色のセーターにデニムをはいた彼氏がにこやかに立っていた。 「晴彦さん、来てくれて有難う」 「いいんだよ。今日は前から手伝うつもりだったんだ。友達も連れて来た。飯島っていうんだ。ジムで知り合ったんだよ」  ジムの友達か。じゃあ、力がありそうだな。もっとも重い荷物はないけれど。箪笥だってクローゼットがあったから要らないしベッドは通販で買うつもりだ。 「飯島さんは何処?」 「車で待ってるよ。俺はお父さんに挨拶しようと思って」  ああ、なるほど。お父さん、呼んで来よう。寧々は玄関から居間に向かって「ねーえ、晴彦さんが来たよー」と言った。お父さんは愛想良く笑いながら「手伝いに来てくれて有難う」と言った。  飯島さんはジムで鍛えてるだけあってガッチリとした体格の人だった。歳も寧々とそんなに変わらないじゃないかと思った。多分30くらい、彼氏とは10歳も違う。バンには殆どの荷物が乗った。今はテレビもパソコンも薄くて軽いので、洋服と本が大荷物なだけだ。だが、ファンヒーターだけがどうしても乗らなかったので、もう1往復しようかと言ったら、彼氏がそれくらいプレゼントしてくれるという。 「このファンヒーター古いし、どうせホームセンターに行くんだろ。買ってやるよ」 「そう?じゃあ、夕ご飯は私が奢ろうか?」 「いいよ、いいよ、引っ越しでお金掛かってるんだろう。駅の傍でみんなで食べよう」  そっか。じゃあ、お言葉に甘えさせて貰おう。荷物が1回で運び終わるなんて思っていたより楽に住む。
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