目玉が見てる

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 でも、この部屋、排水口からか、水のすえたような匂いがする。誰も住んでいなかったから、こんな異臭がするのだろうか。不動産屋のお兄さんは何も言わない。まあ、住んでみたらどうにかなるだろう。排水口を掃除する洗剤で綺麗にいてもいいし、使っているうちに水の淀みが無くなって匂いも無くなるかもしれない。寧々はスリッパを履いてフローリングにあがる。キッチンに行って排水口を見た、綺麗になっていて水道が使われていないから渇いている。匂いのもとはここではない。次に洗濯機パンのところに行く。すえたような匂いが強くなった気がする。寧々は排水口の穴を覗いた、洗濯機を置いたらホースを差し込むための穴だ。すると何だろう。ピンポン玉くらいのものが詰まっている。だから匂っていたのかな。よく見ると中で血走った目玉がギョロギョロとしていた。 「きゃあああああああ」  ついつい叫び声をあげてしまった。 「どうかしましたか?」  不動産屋のお兄さんが驚いたように横に来る。 「目玉が」 「はっ?」  そこで寧々はハッとした。排水口に目玉なんかあるわけないし、そんなことを言ったら変な人だって思われてしまう。でも一応確認して貰おう。 「この穴、覗いて貰えませんか?」 「ええ、何か入ってましたか、すみません」  不動産屋のお兄さんは訝し気に排水口を覗く、 「ピンポン玉みたいなもの、有りません?」 「いいえ、何も変わったことはないですよ」  やっぱり見間違いだったんだ。寧々はホッと息をした。叫んでしまった自分が恥ずかしくなる。
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