目玉が見てる

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 お父さんはサツマイモの天ぷらに醤油を掛けながら「引っ越しの準備はどうだ?」と訊いた。 「うん、大体、段ボールとか袋に詰めたよ。後は運ぶだけー」 「明日は日曜日だから手伝ってやるよ。引っ越し先も見てないしな」 「そう、それなんだけどね、決めたマンション、気になるところがあるの」  排水口から匂ってきてるであろう、すえたような匂い。あんな匂いの中では物も食べられないだろうし、眠るのも嫌だ。お父さんに匂いの原因を考えて貰いたい。それに一瞬だが見た目玉、目の錯覚だと自分を納得させているが、やはり気に掛かる。 「なんだ、気に入って決めたんじゃないのか」 「気に入ってるよ。見た物件の中では一番良かった。でもね、変な匂いがするの」  寧々はそう言うと、ビールをグビグビ飲んだ。 「匂いくらいなら住めば気にならなくなるよ」  お父さんもビールを身体に流し込む。あまり飲んだら翌日に残るんじゃないかと心配だが、量を控えてと言ってそれに応えられるような性格じゃない。まあ、最悪、彼氏とその友達に応援して貰えば大丈夫だろう。彼氏の友達はバンに乗っていると聞いたから、もし手伝って貰えれば2回くらいの往復で済むかもしれない。寧々は残りのビールを飲みほしてお風呂に入ってから布団に潜り込んだ。
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