目玉が見てる

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 次の日に目を覚まして時計を見ると7時だった。何時も会社に行く日は5時に起きてるので2時間も多く寝た。グレーのトレーナーにデニムをはいて1階に行く。歯を磨いて顔を洗うと朝ご飯の支度をする。朝は大抵、魚を焼くだけで後は納豆だとか海苔だとか漬物で御飯を食べる。御飯はタイマーで6時に炊き上がるようになっているが炊飯器のランプが保温になっていることを確認して仏壇の小さいお茶椀に御飯をよそる。お茶はお祖母ちゃんが自分が飲む前に淹れてくれている。  仏壇の前に行って茶碗を置いてから線香に火をつけて線香立てにさす。死んだお祖父ちゃんの遺影を見ると、にこやかだったお祖父ちゃんの顔が渋い顔に変わっていて、眉間に皺を寄せて何か言いたげだった。もしかして寧々が一人暮らしすることをよく思っていないのだろうか。でも、もう後には引き下がれない。お祖父ちゃんは寂しいだけなんだろう。寧々は手を合わせて目を瞑った。 「お祖父ちゃん、これからは毎日こうして線香あげられなくなっちゃうけど、たまに来るから待っててね」  そう心の中で言った。
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