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R指定…絵描きとわたし
言葉
潔癖
夢を追う
◆◆◆
私と、カイが出会ったのはアルバイト先である本屋さんの画材コーナーであった。
「このメーカーの絵の具はあるか」
とボソッと声をかけてきて、場所を教えると私の顔をまじまじと見てきたの。
「モデルさんみたいだな。ちょっと金やるからバイトするか?」
……バイト?お金欲しいしノコノコついて行ったの。そしたら……
「シャワー浴びて全裸でこのベッドで横たわってくれ」
いきなりシャワーに、全裸よ。とても綺麗なシャワー室、アメニティも様々。名前が書いてあるからきっといろんな人が出入りしてるのかしら。
私はとりあえずシャワーだけで全身を濡らした。
シャワー室出た直前に更衣室に彼は私にタオルを渡しつつも私の体をまじまじと見て……鼻で笑う。
だって私、脇腹と下半身にタトゥーがあって、下の毛は処理しているから。
「ピアスの数多いと思ったけど、やべぇやつに声かけちゃったな」
酷い言い方されてムカついた。でも私は体を見せびらかして
「やばいかどうかは確かめてみる?」
と近づいてキスをした。ノンケなら突き放されるだろうが、カイは舌を絡めてきた。何度か口付けをかわして……
「こら、まずは仕事をしろ」
と、ベッドに横たわらされた……綺麗なシーツ。
ポーズは好きなようにって。腕を上げて私のアレを見せつけるかのようにポーズをすると
「数時間、そのポーズとれるのか?それよりもその大きくなったモノはなんとかできないのか」
「だめよ、なんともできない」
「好きにしろ」
「じゃあ好きにするから、目の前でオナニーしてるのみて」
私はアレを自分で擦り、喘いで、体を触り、お尻をなで、もう一度あそこを擦って射精をした。
人前で見せるのは久しぶりで興奮したから綺麗なシーツ、汚しちゃった。
でもなんとも言わない。あれ?そこまで彼は潔癖ではないか。
「あと2回くらい頑張ればできるよ」
って言うとカイは部屋にある箱を開けて画材を取り出した。そうか、彼は画家であったのか。部屋が綺麗すぎる。パレットも綺麗に、絵具のチューブも筆も道具も綺麗。
「なんだ、私はヌードモデルなの?」
「そうだ、なにも聞かずついてきたお前もお前だな。しかもオナニーを見せ付けてクレイジーなやつ……とりあえず数時間耐えられるポーズをしろ。それなりの賃金払ってやるから」
私はそれなら、とベッドに横たわって両手を上げてダラんとポーズをとった。アレは少し大きいまま。
「ティッシュそこに置いておくから」
ポンと置かれたティッシュ。私は汚したところを拭き取る。
「くつろいでいる感じでいいよ。……脇も綺麗に処理しているんだね、身体も美しい。タトゥーもとても繊細でいい仕事をしてセクシーさを増している。顔も小さく整っている。素敵だ……」
そんな言葉を私に投げかけながらもキャンバスに絵を描いていく。ささっと……私はその描いている姿がとてもカッコよく見えて、2回ほど抜いてしまった。というよりも見せつけたと言った方が正しいのだろうか。
それ以来、私はカイの専属モデルになった。深い仲になったのはいうまでもない。恋愛としては私の方が一方的だったけど、彼はとても愛でてくれて、とても楽しい日々だった。たくさんの作品が生まれた。個展も開いて絵もたくさん売れた。
彼からも色々絵のことや道具のことも教わった。だから彼を支えていきたい、と思っていた。マンションも移り住んで、一緒に住んだ。ピアスも同じ位置に開けた。
いろんな人に私を紹介してくれた。私のバーにも友達を連れてきてくれた。
カイとずっといたい。料理も家事もして彼のサポートをした。たくさん尽くした。
なのに。
私がいない間に他の女の子のモデルの女の子を連れ込んでセックスをしていた。
「周りから言われるんだ、そういう趣味あるのかよって」
……。
「もう別れよう。君と付き合って僕は殻を破れた。それに関してはとても感謝しているよ」
……。
「僕は本当はね絵本作家になりたかったんだ。こういう人物画もいいけど、ストーリーを紡いでいくのも好きなんだ」
カイは一つの本を見せてくれた。ワニのキャラクターが出てくる絵本。ワニたちがたくさんいてみんなで楽器を叩いている。
温かみのある絵。
私はわかった。カイの絵だ。タッチは全く違えど絵の温度はカイと同じだ。
「試作していたんだ。いかつい僕がこんなの描いていたら笑われるかと思ってさ」
「すごい、すごいじゃない。絵も素敵だけど、文も好き。絵だけでなくてお話も書ける才能があるなんて。素敵よ、カイ!」
私はカイに別れを告げられたのに、彼にまだしがみつく。
「今度この本、私の本屋さんで紹介する。ポップも作って、あっ、朗読会もして……」
私は気づけば涙をボロボロと流していた。もう私は彼の恋人でもないのに、まだ愛されたいと必死にしがみつく私は醜い。
でも夢を追う彼を支えたい、彼が私をたくさん愛でてくれたように……。
終
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