テディベア

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テディベア

 テディベア  鋏  制服  ◆◆◆  李仁がソファーでくつろいでいるときに僕はすぐそばに座る。見せたいものがあったからだ。袋からそれを取り出した。 「テディベア?」 「そう、被服科の生徒が一つ一つ手作りして作ったんだって」 「可愛いじゃん。しかも制服着てる。女の子の。プリーツスカートまで再現して。技術細かいー」 「でしょ?さすが。毎年卒業制作の展示やファッションショーもやってるけどさ……」 「今年は中止……てことね」 「そうなんだよね」  そう、新型ウイルスの流行は僕の勤める高校にも影響はもちろんあった。 「卒業制作のために頑張っていたのも水の泡。みんなそれぞれ進路も違うのにあっという間に卒業式……残念だよ」  袋からもう一体テディベアが。それには男子生徒の制服でなくてスーツにメガネをかけていた。 「被服科の生徒、一枚一枚鋏を入れて綺麗に裁断して縫い上げて……学年主任として見てきたから……なんだなぁ」  涙がはこみ上げてくる。これはとある二人の生徒が協力して作成したものだ。僕にプレゼントしてくれた。三年の学年主任の僕にと。  見ると彼女たちの笑顔を思い出す。悔しいだろうに、でもとびっきりの笑顔を見せてくれた。 「湊音せんせ、元気出して?」  と李仁が女の子の制服を着たテディベアを僕の頬にツンツンとつけてきた。 「ありがとう。色々と思いだしてさ……」 「湊音先生も、色々お疲れ様でした」  と李仁はまだ、テディベアを使って声色を変えて話す。テディベアが話してるかのよう。  そしてテディベアで僕の顔、体をツンツン、とつつく。  ……くすぐったいよ。と思った瞬間に、李仁からほんとうの口づけ。  僕は李仁の胸元ですごく泣いた。生徒たちの前では泣くものか、と我慢していたから。  僕と李仁の手にはテディベア。泣きながら僕は自分の持っているテディベアを李仁のテディベアにキスをした。ハグしてくれる李仁ベア。  ん?なんか……!!!僕のベアが押し倒されて上に乗っかった李仁ベアが変な動きを……!!  李仁がいやらしい声を出す。な、なんだっ!?こんな時でもこんなことをっ! 「変態!」 「ふふふ」  終
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