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さるたぬ合戦〜星の金貨の乱〜
遥かでもない。遠くもない。つい最近の昔。
人が一昨日と呼ぶくらいのこと。
とても個人的な、側から見ればじつに阿呆らしい、しかし、なんとも激しい戦がありました。
ことの発端は、日ノ枝大社に『星の金貨』という果実が納められたことに始まります。
その世にも珍しい『星の金貨』を巡り、猿と狸の想像を絶する。聞くに耐えない。醜い争いが勃発したのです。
※ ※ ※
大きな湖の畔に日ノ枝大社という古い神社がありました。
その境内を流れる川の岸辺で小さな狸と、派手な格好をした猿が言い争いをしていました。
いつもの事なで、境内に住む動物達は全く気にしていません。
「これはウチが取ってきたの!だから、ウチのなの!!」
「戯け!神社に納められたものならば、ワシのものに決まっておろうが!!」
「なにを偉そうに!自分じゃお供物を取ってこれないくせに。物欲しそうに指を加えて見てたのは誰なのさ!」
「物欲しそうになど、しとらんわい!そもそもおまえは神に対しての態度がだな・・・」
言い争いをしている二匹は、日ノ枝神社の神様と、境内に住む子狸でした。
子狸の名はマメといいます。
マメは故あって不老不死になってしまった、スーパー狸で、神様の御使いでもありました。
だけど、マメは神様な御使いなのに、神様に反発ばかりして、全く言うことを聞きません。
こういうと、マメが我儘な狸に聞こえるかもしれませんが、それにはふか〜い理由があるのです。
でも、それはまた別のお話し。
「じゃあ、勝負しょう。勝った方が『星の金貨』を貰うの」
マメが神様に提案しました。
だけど、神様は首を縦に振りません。
マメはとても賢く、勝負ごとにめっぽう強いのです。
「なんだ。勝負する前からウチの勝ちを認めちゃうんだ。カッコ悪いなぁ。それでも京の都を守護する神様なのかねぇ。狸ごときとの勝負に尻込みするなんて、もう神様を引退したほうがいいよ。辞表を書こう。そうしよう。ウチが伊勢神宮に届けてあげるよ」
マメは事ある毎に、神様を神の座から降ろそうとします。
「戯言吐かすな!この狸めが!!ワシがおまえなんぞとの勝負に尻込みするわけなかろう。どんな勝負をするか、ちょっと考えていただけだ」
マメがジド目で、「ふーん」と言うと、神様は、「おまえはすぐにズルをするからな」と鼻を鳴らした。
「ズルじゃないよ。ちゃんとルールは守ってるよ。それなのに難癖つけるのは神様じゃないか」
「おまえのそれは屁理屈だ!」
「屁理屈も理屈。屁理屈が通れば道理が引っ込む」
「それを言うなら、『理屈が通れば』だろう。阿呆めが!」
「狸は生来、阿呆と決まってるの!それで、勝負はどうするのさ」
神様は少し考えて、山の中腹にあるお社を指差しました。
「駆けっこだ。駆けっこで、勝負だ。あの社に先に着いた方の勝ちでどうだ?」
「いいけど、神様は飛べるじゃないか。飛ぶのは卑怯だよ」
「飛びはせん」
「木を伝って、真っ直ぐ行けるじゃないか。猿なんだし」
「木には登らん。ちゃんと道を走る」
「本当に?」
「ワシは神だぞ。嘘は吐かん」
「本当にちゃんと自分の足で走る?」
「疑い深いやっちゃな。ちゃんと自分の足で走るわい。神の力は一切使わん」
「約束を破ったら、ウチの勝ちだからね!」
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