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おじいさんは急に顔色を変えて、座ろうとするおばあさんを席から引き離した。そして、勝手におばあさんと口論を始めてしまった。おじいさんの声はだんだん大きくなっていき、おばあさんはしきりにこちらに頭を下げて、すみませんを連呼する。
とんでもないことになってしまった。浩二はもう訳が分からなくなって、まあまあ、落ち着いて、などの言葉を、ただ投げかけていた。とりあえず座ってください、とも言ったが、それらに言葉が返されることはなかった。
やがて、車内に目的の駅の名前が告げられる。やはり、もうこれ以上は駄目か。浩二は口を閉ざして席に腰を下ろすと、静かにうなだれた。
「ほら、もう駅だよ」
彼女の声が聞こえた。慰めるような、嘲笑うような口調だった。
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