暗雲――同級の仲間

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暗雲――同級の仲間

「おす!加藤」  教室に入ってきた清弥に気づき、福島が手をあげる。 「おす!」  清弥も笑顔で応える。 「お二人さん、今日も息が合ってるね」  挨拶をしただけでいちいち男子がちゃかしてくる。  清弥はハイハイと流していつもの窓際に向かい、席について外を眺めた。 「なんか最近、天気悪いね」  福島が近づいてきているのに気づいた清弥は、福島を見ずに外を見つめたまま話しかける。 「だな」 「今日から水泳あるけど、やだな」  福島が来てから一月ほどが過ぎ、田植えの時期も終わっていたが、天気が悪い日が多いせいかまだ肌寒い。 「あのさ、あれ……」  福島が黒板を指さし、清弥は何か描いてあるのに気づいた。 「もう、先に来てたなら、消しといてよ」 「いや、変に反応するのも周りを楽しませるだけだろ?」 黒板には、相合い傘と「福島、加藤」と書かれている。 「私、消してくる」 「そんなイヤか? それに、どこかの福島か加藤かもしれないだろ?」 「私、福島君の女じゃないし、周りにそう思われるのは嫌」 清弥はすぐに黒板へと行き、消しにいく。 「そっかく書いてやったのに消しちゃうのかよ」とちゃかす声が聞こえてきたが、清弥は無視をして、消し終わると席へと向かう。 「イタッ」  清弥は足元に何かを引っかけて前のめりに倒れた。  足元には、紐をピンとはったトラップがしかけてあったのだ。  周りからクスクスと笑う声が聞こえる。  清弥は立ち上がると、顔色を変えずに席へと戻る。 「大丈夫?」  清弥の席から一部始終を見ていた福島が声をかけてきた。 「大丈夫。あんなものに気づかなかった自分がふがいない」  武術科では、忍術についても学ぶことがあり、トラップを作ったり避けたりは日常茶飯事で、二年にもなれば、生活の一部とかしていて、自然と体が動くようになっている。 「けど、あれ、加藤が戻る時に無理矢理引っかけようとしてたぞ?」  福島が鋭い目つきでさっきトラップがあったところを見る。トラップはもう回収されて無くなっている。 「どっちみち、武術師なら、あんなものでも反応できなきゃ」 「そっか。なんか加藤をピンポイントで狙っているのが多い気がするんだよな。気をつけろよ」  福島は清弥の肩をポンポンと叩いて席に戻っていった。 「ご忠告ありがとう。いい鍛練になるといいな」  清弥は力なく笑った。  清弥は福島と仲良くしていることで狙われているのはわかっていた。  普段あまり周りと関わらない分、清弥が福島――転入生と関わる姿は目立ってしまうようだ。  たまたま気が合って、同級の仲間として仲良くしているだけなのに、バカバカしいなと清弥は思う。男と女が一緒にいるだけで、そういう目でみられるのはうざったい。
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