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暗雲――宮中
百年前の日本、非参戦派は超科学的な殺戮兵器の使用を嫌い、近代化されすぎた生活をも否定しだしたし、自然や神々を大切にする古来の日本にすべきという考えに至り、天皇中心の国を目指して拠点を京都にした。
日本政府は、国民に対して武力を振るって他国から非難されることを恐れ、非参戦派を日本と切り離すことにした。つまり、天皇を中心とした非参戦派は別の国として独立し――和国となり、参戦派は日国となったのだった。
和国の政治の中心、宮中は重苦しい雰囲気につつまれていた。
天皇がいる内裏に、政治補佐の官職たち、奇術師と武術師の長が集まり話し合いが続いている。
「で、この天候を変える許可を」
奇術師が天皇を見つめる。
天皇は一段上になった所に鎮座していて、簾で遮られているため表情はわからない。
「ならぬ。
我国では、術で天気を変えることは禁じられておる。天気を変えることは大天災につながるが故」
「しかし、今の天気の状況は日国からの影響によるもの。我らの防御の力で何とか影響を小さくしていますが……」
「向こうがこちらを攻めてくるなら、反撃をするのはいかがですかな?」
と、武術師が意見を述べる。
「それは、絶対にならぬ。
我国は不戦国家。それに、こちらに影響を及ぼしているのは、日国にとらわれた和国民だと聞く。
直接日国がやってないとすると、反撃した我国が不利になる可能性もある」
「ならば、とらわれた和国民をこちらに戻すことはできませぬかな?
さすれば、及ぶ影響も無くなりましょう」
「国交が断絶しているが……」
「武術師にお任せを。
忍者隊が日国に忍びこんで連れ帰ります。誘拐された者を救出するだけなら、いかがでしょう?」
「うむ……。では、とらわれたものの救出を頼む。
あとは、みなで国の防御に努めるよう頼む。あまり国民が混乱しないようあまり公にするな」
そう天皇は申し、奧に下がっていった。
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