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魔法のお菓子の女の子
今日、私は死のうと思う。
会社をリストラされ、妻は私を見放し離婚の判を半ば強制的に押され、息子は小さな息子は妻に取られてしまった。
私にはもうなにもない。
嗚呼、この世が恨めしい。全てが恨めしい。
そう思いながら公園のベンチで私はタバコを吸いながらどうやって死のうかと考え込んでいた。
世の中には様々な自殺方法があるが、出来る限りなら楽な方が良い。
苦しむのは痛いのは極力避けたい。
そう、私は度胸もない人間だ。苦しみに耐えるのが嫌いな人間だ。
だがそれは至極普通のことで何も間違っていないはず。
「はあ……」
大きなため息をついて、公園を見渡すと楽しく走り回っている子どもたちがいた。
息子とかぶって、妻に奪い去られた息子を思い出して涙が出る。
子供の声が……辛い。
「おじさん」
その時、目の前から声が聞こえた。澄んだ女の子の声だ。
見てみると、6歳か7歳の女の子だ。
「なんだい」
私はそう答えた。
「泣いてるの?」
女の子は躊躇なく言った。
「……ああ、泣いてるよ」
少しの間があった。
「じゃあ、これあげる!」
少女は一つの小さな飴玉をくれた。
口に入れると懐かしい若い頃の子供の頃に戻ったような懐かしい味がした。
「死んじゃだめだよ!」
「……え!?」
驚いて顔を見上げると少女はもういなかった。
狐に化かされたような気がした。だけど、飴は口にあるコレは現実だ。
そうか、神様は私に生きろと言っているのか。
私は飴玉を口に含み顔をあげ一言。
「もう少し、頑張って生きるかあ~……」
人生は何度でもやり直せる死ぬなんてことは逃げること、生を受けたからには全うしなければいけない。
私はそう気がついた。
ありがとう、魔法のお菓子の女の子。
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