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俺こと多田百樹(ただ ももき)の彼氏・西園寺怜斗(さいおんじ れいと)は、顔良し、スタイル良し、経済力良しの完璧すぎる男だ。
俺と怜斗は幼馴染で、お互い三十過ぎても独身だったらルームシェアをしよう! と冗談交じりに語っていた。
しかし何の因果か、お互い結婚することなく、三十路過ぎた今になっても一つ屋根の下で暮らしている。
ちょっとばかり仕事ができる平凡な俺と違って、怜斗はとにかくモテにモテまくるのに、どうして独身だったのかって?
何を隠そう怜斗はーーーー。
「俺の彼氏は顔面と言動が一致しない!」
怜斗の最大の問題点。
それは顔が良いのにど変態で、おまけにヘタレ属性だったのだ。
◇
「どうした、百樹。急に叫んだりして」
「ああ? 何でもねえよ、怜斗。ただお前の顔が良すぎてキレそうなだけだ」
「いやキレてるよね。すでにキレてるよね」
「キレてねえって言ってんだろ!」
俺たちのケンカは日常茶飯事だ。
ケンカというよりも一方的に俺がキレている場合が多いが。
見た目はパーフェクトなのにどこかウジウジしている(ように見える)怜斗は、俺の他に友達がいない。
怜斗に寄ってくるやつらは、大抵アイツの金が目当てなのだ。誰も怜斗自身を見ようとしない。
怜斗とは幼稚園からの付き合いだが、三十過ぎて一緒に暮らし始めて、初めて知ったことがある。
怜斗はゲイで、俺のことが初めて会った時からずっと好きで、もっと言うと俺も怜斗のことが好きで、両片思いのまま時を過ごし、ようやく一つ屋根の下で暮らすことができたのだ。
「なあ、百樹……」
「今度は何だよ」
「俺には……お前だけだ」
「は?」
無駄にキリッとした目線で怜斗が俺を射抜く。
「俺にはお前しかいないんだよ。お前も俺が好きだろ? だから結婚しよう」
「いや、確かに俺もお前が好きだし、俺たち付き合ってると思うけど結婚は無理だろ」
「なんで!」
「男女のカップルでもそうだろ? みんながみんな付き合ったからと言って、結婚するわけじゃない。法律的な問題もあるけど、大前提として、俺たちうまくやっていけるかどうかが大事じゃね?」
「まあ……そうだけど、でもさあ」
「それに!」
俺は湯船から一気に立ち上がり、目の前の怜斗に人差し指を突きつけた。
「風呂入ってる途中でシコるんじゃねえよ! 排水溝詰まるだろうが! 誰が掃除すると思ってるんだ!」
前述した通り、西園寺怜斗には問題がある。
同棲しているとはいえ、怜斗は所構わず俺でシコろうとする悪癖があった。
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